2009年11月25日水曜日

何とかならぬか、固定電話

ディジタルーアナログーディジタル変換

我が家の電話機が壊れたので、しかたなく買い換えた。固定電話の世界でもIP電話などの新しい技術が現れているので、少しは新しい電話機が現れているのではないかと思ったが、基本的には従来とまったく同じようなものしか売ってないのでいささか驚いた。固定電話は最近のネットワークや携帯電話の進歩から取り残されているようだ。ここでは4点を取りあげる。

最近、固定電話に光回線を使ったIP電話が増えている。そこを流れる音声はディジタル化された信号だ。また、コードレス電話の親機と子機の間の通信も、最近はディジタル化されている。今回買い換えたものもディジタルのコードレス電話で、子機の音声の品質は格段によくなった。

ところが光ファイバの終端装置から固定電話の親機までの間は、従来の電話と同じアナログ信号だ。光終端装置でディジタル信号をアナログに変換し、それを受け取った電話機で再度ディジタルに変換するというバカバカしいことをやっている。これでは部品が増える上に音声の品質が落ちる。

電話の基幹回線にも、コードレス電話にも、サンプリング周波数8kbpsのPCM(パルス符号変調)が使われている。量子化ビット数は基幹回線では8ビット、コードレス電話では4ビットと異なるが、同じ変調方式なので、基幹回線のディジタル信号をコードレス電話のディジタル信号へ直接変換すれば簡単にできるはずだ。

もちろん、IP電話に切り替えても、壁に埋め込まれた屋内配線をいじりたくない人もいるだろう。したがって、従来のアナログ入力の電話機がまだあるのは、ごく自然なことだ。しかし、家を新築し、電話回線も電話機も新設する人にとっては、こういう製品しか選択できないのはいかにも不便だ。

一つの家庭に無線ネットワークが二つ

最近は無線LANで家族のパソコンを相互に接続している人が多い。インターネット接続の回線を共用したり、ファイルを交換し合ったりしている。そして、ビデオゲーム機などもこの無線LANを介してインターネットに接続し、ソフトを更新したり、ウェブを閲覧したりできる。「ホームネットワーク」の時代の到来である。

一方、コードレス電話も家庭内の無線ネットワークで、親機と子機の間とか子機同士で通話することができる。つまり、家庭内に無線ネットワークが二つ存在することになる。

電話にも無線LANを使ってこれらを一つに統合できれば、無線ネットワークが一つで済む。その技術は、デュアルモードの携帯電話ですでに実用になっている。例えば、NTTドコモの「PASSAGE DUPLE(パッセージ・デュプレ)」では、1台の携帯電話機で携帯電話回線と無線LANのいずれからでも電話をかけられる。

コードレスの子機と携帯電話がゴロゴロ

コードレス電話の子機をいくつかの部屋に設置している家庭が多いだろう。一方、家族がそれぞれ携帯電話を持っている家も多い。コードレスの子機も携帯電話機も、スピーカーとマイク、電話番号を入力するボタンやそれを表示する液晶画面、電話帳の機能などを備えている。似たようなものが家じゅうにゴロゴロある。この二つが一つになれば便利なことが多いはずだ。

両者で最も違うのは回線の接続回路だ。しかし、もし前記のように、コードレス電話にも無線LANが使われるようになれば、無線LANと携帯電話回線と両方が使える電話機はすでにあるので、この問題は解決される。現在のデュアルモードの携帯電話は、携帯電話の接続に携帯電話回線と無線LANとを使い分けるものだが、この無線LANを固定電話の接続にも使えるようにすればいいわけだ。

アドレス帳が氾濫

パソコンのメール・クライアント、宛名印刷ソフト、固定電話、携帯電話などにアドレス帳とか住所録とかいう機能がある。登録する内容には共通なものが多いが、従来はファイル形式が違ったため、それぞれ個別に登録する必要があった。この問題は、「アドレス帳が一つになる日」という題で5年前にオーム社の雑誌に書いたことがあり(注1)、そういう日が来ることを待ち望んでいた。

その後多少進歩し、最近ではメール・クライアントで使われるアドレス帳は、他社製品との間でもデータが交換できるようになった。それはvCardという標準ファイル形式が普及したからだ。このvCardはiPhoneにも使われていて、iPhoneではパソコンと携帯電話でアドレス帳を共通に管理できるようになっている。

我が家で今まで使っていた電話機では、数字ボタンを使って電話帳を新規に入力する必要があったが、今回買い換えた電話機では、電話機を使わなくてもパソコンで電話帳を作成できるようになっていて、少しは改善されていた。しかし、他の製品のアドレス帳、住所録の類とのデータの交換はできない。いや、他社製品どころか、同じメーカーの電話機の間でもどこまで共通に使えるのか不明だ。

一歩前進したが、「アドレス帳が一つになる日」はまだまだ遠いようだ。

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もちろん、ここに書いたような問題がすぐに解決されるとは思わない。しかし、今回買い換えた電話機を見る限り、そういう方向へ進もうとする気配さえ感じられないのは非常に残念だ。固定電話は需要が減っていて、メーカーとしても力が入らないのは分かる。しかし固定電話は、数は減ってもなくなることはない。携帯電話やコードレス電話と統合して新しい電話の世界が切り開かれることを望みたい。それには、固定電話と携帯電話を一体の事業として推進する体制が必要だと思う。

(注1) 「アドレス帳が一つになる日」、「Computer & Network LAN」、2004年10月号、オーム社(http://www.toskyworld.com/archive/2004/0410addressbook.htm)

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