2010年1月6日水曜日

Androidがスマートフォンの市場を席巻!?

スマートフォンのシェアの推移は?

携帯電話の市場が伸び悩んでいる中で、勢いがいいのはスマートフォンだ。そして、そのスマートフォンの市場は、昨年11月の本ブログ「『いつか来た道』のその後」にも記したように、少数のOSによって寡占されている。

Canalysの統計によると、2009年第3四半期のOS別の台数シェアは、Symbianが46%、BlackBerryが21%、iPhoneが18%、Windows Mobileが8.8%、Androidが3.5%だという。これら5 OSで97%強を占め、その他は3%弱に過ぎない。(1)

では、これらのOSのシェアは今後どうなるのだろうか? まず、最近の推移を見てみよう。

現状ではSymbianが圧倒的なシェアを占めている。しかし、上記統計によると、2年前の2007年第3四半期のSymbianのシェアは68%で、Symbianはこの2年間にシェアを22ポイント落とした。

では、この間にSymbianの市場を奪ったのはどこか? 最もシェアを伸ばしたのはiPhoneで、この2年間にシェアを3%から18%へと15ポイント増やした。そして1年前にAndroidが戦列に加わり、この1年で3.5%のシェアを獲得した。このAndroidのシェアが今後どうなるかが、当面の注目の的だ。そこで、Android陣営の状況を見てみよう。

Android陣営に続々と参入

Androidは 2007年11月にグーグルによって発表され、2008年9月には、そのアプリケーション・ソフトの開発ツールがリリースされた。同年10月にはAndroid Marketという、Androidのアプリケーション・ソフトの流通市場もオープンした。

Androidのスマートフォンのトップバッターは台湾のHTCによるDreamで、2008年10月から順次世界各国で発売された。そして、日本でも、その後継機のNTTドコモ版であるHT-03Aが2009年7月に発売された。

2009年には、6月にサムスンがI7500を発売し、10月から12月にかけて、モトローラ、LG、デル、エイサーが発売した。また、ソニー・エリクソン、シャープ、NEC、パナソニックなども製品を発表したり、検討中と表明したりしている。

これらのメーカーの中には、デルのようにAndroidではじめてスマートフォンの市場に参入するところもあり、また、モトローラやエイサーのように、Windows Mobileのスマートフォンを止めてAndroidに切り替えるところもある。

携帯電話機の大メーカーでAndroidの採用を表明してないのは、スマートフォン用OSであるSymbianを自社で持っているノキアだけだ。ノキアも、2009年6月にイギリスのガーディアン紙によって、業界筋の情報によればAndroidのスマートフォンを開発中と報じられた。ノキアは直ちにこれを否定したが、経営の選択肢の一つとしてAndroidの採用を検討している可能性は十分考えられる。

では、なぜこのように多くのメーカーがAndroidを使ったスマートフォンの市場への参入を図っているのだろうか?

なぜAndroidか?

まず、iPhone OSは「クローズド」で、それを使うハードウェアはアップルしか作れない。一方、Androidは「オープン」で、誰でもハードウェアを開発・販売できる。

クローズドな世界だとハードウェアの種類が限られるのに対して、オープンな世界ではユーザーの多種多様なニーズに対応した製品が出現し、それがシェアの拡大につながる。そして、それがまた新企業の参入を促し、シェアの拡大再生産が実現する。これはパソコンの世界でのクローズドなMac OSとオープンなWindowsでも同じだった。技術的にはMac OSの方が先行していて、優れている点が多かったが、ビジネス上Windowsに勝てなかったのはこのためだ。

Androidを採用するスマートフォンには、4インチの大型ディスプレイを特長とするもの、8メガピクセル以上のカメラを持つもの、11mm台の薄さを誇っているもの、GSM系の回線で使えるもの、CDMA系の回線で使えるものなどある。非常にバラエティに富んでいて、ユーザーの選択肢が多い。アップル1社によるiPhoneはとても太刀打ちできない。

ハードウェアとの関係がオープンなのはWindows Mobileなども同じだ。しかし、AndroidはWindows Mobileなどと違い、OSがオープンソースで、ユーザーが自由に変更できる。そのため、例えば特定の業種や業務向けのスマートフォンを作ることもでき、また、また特定の大企業向けに仕立てることもできる。そのため、アプリケーション・インターフェースが限定されているWindows Mobileなどよりビジネス向けには適している。

また、スマートフォン用プラットフォームとして重要な仕掛けに、アプリケーション・ソフトの流通機構がある。iPhone用のiPhone Storeは2008年7月に開店し、Android用のAndroid Marketは2008年10月にオープンした。すでに、10万のiPhone用アプリケーション、2万のAndroid用アプリケーションがこれらの市場で流通している。質が悪いものが数だけ多くても意味がないが、中国がオリンピックで強いのは、やはり13億人の人口が選手層を下から支えているからだろう。

一方、Windows Mobile用の流通機構であるWindows Marketplace for Mobileが開店したのは2009年10月だ。マイクロソフトはこの点で1年以上遅れた。

そしてWindows Mobileは、次世代のスマートフォンの操作の基本になると思われるマルチタッチ・スクリーンをまだサポートしてない。また、スマートフォンのメーカーにとっては、Androidが無料であることももちろん重要な点だ。

これらの理由から、各社がAndroidへと走っているのだろう。では、Androidに問題はないのだろうか?

Androidの問題は?

一つの問題は、オープンソースで自由に改変できるために、相互に通用しない「方言」を含んだAndroidが多数できる恐れがあることだ。特定の業種や業務向けに変更できる強み、スマートフォンのメーカーが自社の特長を発揮するために変更できる強みが、逆に弱みにもなり得る。必要な「方言」は結構だが、「標準語」を使うべき分野にまで侵食し、お互いに話ができなくなったらどうしようもない。方言の適用範囲を機器メーカーが自主的に厳しく規制する必要がある。これはWindowsなどのプロプライエタリなOSにはない問題だ。

もう一つの問題は、Androidに限らず、グーグルのOSが何ごともウェブで処理しようという、今風に言えばクラウド指向のOSだということだ。コンピュータのデータ処理がすべてウェブになるわけではない。スマートフォンでのデータ処理は大半がウェブでも片付くかもしれないが、やはりローカルに処理をした方が合理的なものもあるのではなかろうか?

このようにAndroidにも問題があるが、現在のところAndroidが最も有利なポジションにあると思われる。ただ、OSの世界の勝敗が理屈通りにならないことはパソコンの歴史が示しているので、今後の見通しは予断を許さない。

(1) “Canalys Q3 2009: IPhone, RIM taking over smartphone market”, AppleInsider, November 3, 2009

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