2010年1月18日月曜日

ソフトバンクがウィルコムを獲得!?

ウィルコムにソフトバンクが出資?

PHSの通信事業者であるウィルコムの経営が苦境に陥っていることは、昨年11月12日の本ブログ「PHSはどうなる?」に記した。1月15日の日経新聞によれば、このウィルコムが日本航空と同様、企業再生支援機構を利用する方向で最終調整に入ったという。

同紙によれば、本機構の他、ソフトバンクと投資ファンドのアドバンテッジパートナーズが出資を検討中という。そして、ウィルコムの現在の出資者はカーライル・グループが60%、京セラが30%、KDDIが10%だが、報道によれば100%減資の方向だという。そうなれば、今後の通信事業の実質的な推進役はソフトバンクだけになる。

ソフトバンクは即日、本記事は報道機関の憶測に基づくもので、同社による発表ではないと表明した。そのため、本記事の信憑性は不明だが、仮に本当だとすると、これはソフトバンクにとってどういう意味があるのだろうか? 大きなメリットを二つ挙げよう。

加入者数が2割増!

電気通信事業者協会の統計によると、昨年12月末の加入者は、NTTドコモが5,540万人、KDDIが3,140万人、ソフトバンクが2,170万人である。同じ土俵で戦っていくには、少なくともトップの半分以上の加入者が欲しいところだが、現在ソフトバンクの加入者はドコモの加入者の4割にも満たない。これでは平等な競争は厳しい。

もしソフトバンクがウィルコムの加入者の430万人を獲得すると合計2,600万人になり、まだドコモの半分には手が届かないが、今後のシェア向上の大きな足がかりになる。

2.5GHz帯の免許を獲得!

日本では2007年に、総務省による2.5GHz帯の電波の免許の交付があり、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクのそれぞれが関係する3グループとウィルコムの4事業者が申請した。同年12月にその選定結果が発表され、KDDIのグループとウィルコムが免許を取得し、ドコモとソフトバンクのグループは選に漏れた。

この選定の問題については「OHM」2008年3月号の「ガラパゴス脱出なるか?・・・次世代PHS」に記したが、総務省が次世代PHSを担いだウィルコムを選定したことの妥当性には疑問があった。

ところが今回の出資によってソフトバンクは、2007年に獲得できなかった2.5GHz帯の免許を実質的に獲得することになる。これは今後高速サービスを拡大する上で非常にメリットになる。

次世代PHSをどうする?

ウィルコムの総資産は約2,000億円、有利子負債は約1,300億円である。そして現再建計画では100%減資を検討中といわれ、また、銀行からの借入金935億円に対する債権の一部放棄を銀行団と調整中だといわれる。したがって、今回の出資者には、上記のようなメリットとともに、700億円を超える資産がまるまる手に入ることになる。ここまでは非常においしい話だ。

問題は現在のPHSの加入者を引きつぐ新しい通信システムの構築費用だ。しかし、ウィルコムが進めつつあった次世代PHSの事業見通しが確かならカーライル・グループ他、出資者はいくらでもいたはずだ。ウィルコムが現時点で財務的に破綻したわけでもないのに事業再生ADRや企業再生支援機構に頼ることになったのは、この次世代PHSの将来性を信じる人がいなくなったためと思われる。

こういう新技術は、何が何でも自主技術だという狂信的信者集団がいてはじめてものになる。ウィルコムの現役員の大半は退陣するというので、もはやこの次世代PHSプロジェクトの続行は困難になるのではなかろうか? ではソフトバンクはどうするつもりだろうか?

ソフトバンクは現在第3世代のHSDPAのサービスを提供中で、2011年にDC-HSDPA(最大42Mbps)のサービス提供を経て、その後、時期は未定だが、第4世代のLTEに移行の予定だという。同社は、これらとは別に、2007年の2.5GHz帯に対する申請ではWiMAXを提案した。

しかし、当時から3年経ち通信の市場環境も変わった。昨年末にはスウェーデンのストックホルムやノルウェイのオスロでLTEの公衆サービスが始まった。そして今年の12月にはNTTドコモがLTEのサービスを開始する予定である。2011年には世界中の多くの通信事業者がLTEを採用することになりそうだ。

そして、筆者が「OHM」2008年8月号の「WiMAXとLTEが合流?」に記したように、将来はWiMAXがLTEに合流する可能性もある。

このような状況から、ソフトバンクは次世代PHSの事業計画をLTEに切り替え、現在のPHSの加入者を順次HSDPA、DC-HSDPA、LTEで取り込んでいくことも考えられる。

もしそうなれば、ウィルコムに交付された2.5GHzの帯域が生かされ、かつ、PHSの加入者が路頭に迷うこともない。PHSの生みの親である総務省としては、次世代PHSはうまくいかなくても最悪の事態は免れることができ、まずはやれやれということになるのではなかろうか?

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